いかにも軽そうなイケメンが龍介達の前に姿を現す。
その姿を見ただけで、呼び捨てにされただけで、一気に清華が不機嫌になる。
この一見するだけでモテ男とわかる人物が、幻水が清華の許嫁と決めてきた、北神拓弥(きたがみたくや)である。
「なにしにきたの……。北神家のお坊ちゃんが」
「ご挨拶だね清華。僕は君を危機から救ってあげようとここにきたんだよ?」
「助けてなんて……頼んでない。帰るわよ龍介」
「まあ待ってくれないかな清華」
脇をすり抜けようとした清華の腕を、拓弥が捕まえた。
それを見た龍介は眉をひそめる。
「そろそろ催淫の発作が出て苦しくなるはずさ。君には僕が必要なんだよ。さ、僕と一緒に来るといい」
「おじい様から条件は聞いてるはずよっ……。私はまだ、あなたをパートナーと認めて……ないわ」
「相変わらず強情だね君も。もっと素直になった方がいいな」
「いいから放して!」
清華が強引に振り解こうとするも、手が震えてあまり力が入らない様子。
鬼達を相手に多大な霊力を消費したので、身体が疼いてきている。発情しているのだ。
いけ好かないお坊ちゃんに自身の主をいいようにされて腹が立った龍介。
「北神さん、うちのお嬢様が嫌がってるので手を放して貰えませんか?」
龍介が拓弥に手を伸ばしたときだった。
拓弥が空いた方の手を一閃させる。
途端に龍介はその場に引き倒され、そこに磔にされた。
肩や腕、脇腹に股座など、幾本もの針型手裏剣が、龍介の衣服を地面に縫い止めていた。
「私の従者に手をあげるなんて……どういうつもり!?」
「従者? そんな身分の低い者が僕に触れようとする方がいけないのさ。君はそこで這いつくばってるのがお似合いだよ」
「く!?」
「あなたね!!」
清華は渾身の力で手を振り解きつつ、同時に張り手を見舞う。
けれどそれは拓弥に受け止められた。
「やっぱり発作があるみたいだね、鈍ってるよ?」
「……どうかしら?」
振り解いた手はミセリコルデを抜いて、拓弥の喉元に突き付けられていた。
降参して清華の手を放す拓弥、必ず清華を手に入れると捨て台詞を吐いて去っていった。
そのあと清華に磔状態から解放して貰った龍介。
しかし今度は、清華に限界が訪れる。
案件が片付いて安堵したようにふらつく清華を、龍介が支えた。
「ひぃッ!!? さっ、触るなぁ……!」
「ぶべ!!?」
悲鳴を上げながら清華、龍介を殴り倒す。
いつものような強烈な威力はなかったものの、龍介は助けようとしたのにと猛抗議。ついでに鬼達のど真ん中に放り投げられたことも死ぬところだったと訴える。
しかし催淫状態にあっても清華は冷たくあしらう。
それを受けて心の中でブチキレな龍介。
自身の身体を抱きながら内腿を寄せつつ震えている清華を見て、いつもより少し入念にイタズラしてやれと思う。
朝起こすとき、着替えやお風呂で……。
催淫の発作が起きて発情していても普段通り生活しなければいけないという条件をたてに、龍介の性的イタズラの日々が始まるのだった。
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