▼ストーリー▼
「ゆうくんは……えと、どんな女のコが好みなの?」
キミは今まで、そんな事を聞かれた事はあるだろうか?
オレは、ある。
今の今。
夏休み直前、期末テストの最終日の放課後の人通りのない裏庭に呼び出されて、そう聞かれている。
「え……?」
詰まる言葉。
「だから……えと、そのゆうくんはどんな女のコが好きなの?」
もう一度、時枝柚子(ときえだゆず)、日本名柚子(そのまんま)にそう聞かれる。
昔はよく一緒に遊んで、柚子の両親の仕事の都合で一度は別々になったけど、この春に学園の入学式で再会した幼なじみ。
「昔みたいに夏休みは家族で一緒に……ううん、今年はボクはゆうくんと2人きりで旅行に行きたい」
そう言った柚子に女のコの好みを聞かれた。
「えっと……」
詰まった言葉のその後で、思考が長距離渋滞を起こしてヒートアップ!
2人きりで旅行?
そしてオレの女のコの趣味?
つまりソレって……。その後に来るのといえば……。
その2つがゴッチャになって、混乱が混乱を呼び大混乱!
「ゆうくん?」
そして、混乱がピークに達したとき、柚子がオレの返事を促してきた。
~どんな女のコが好きなの?~
そんなのは、決まっていた。
「胸の大きい女のコかな?」
「……え?」
「い、いや。大きいだけじゃだめだぞ?」
それだけじゃダメだ。
「大きさはもちろん、質感や外観、感触に造形、身体のバランス、だけじゃなく、その持ち主の身長や体型に合ったナイスオッパイ、それを持った女のコだ!」
「え……えと?」
「じ、実はオレ、オッパイが好きなんだ」
混乱と混迷を極めた思考の中、挙げ句にテンパって、言わなくてもイイ事までカミングアウトしてしまうオレ。
「オレは……オレは、オッパイが好きなんだっ!」
挙げ句絶叫……したオレに柚子は引きつった顔で聞いてきた。
「じ、じゃあゆうくんは……どんなオッパ……胸の女のコが好きなの?」
「決まっている!」
よくぞ聞いてくれました!
「理科の宙宮(そらみや)だ!」
我が理想のオッパイユーザーの名前を高らかに宣言!
「ゆ、ゆうくんのバカ~~~~ッ!!」
直後に上がる可愛らしい絶叫と、オレの鳩尾に沈む鉄拳。
悶絶する間もなく沈む意識。
「ゆうくんのバカ~~~~ッ!!」
それが最後にオレが聞いた柚子の声だった。
13分12秒経過……。
「七孔憤血(しちこうふんけつ)!!」
謎の言葉と共に、現世へ生還したオレ……。の前に何かいる。
「あ、いたいた♪」
「………」
身長は約20センチの女のコの人形(?)が、オレの鼻先数60センチの所に浮いている。
「………」
「いや~、時空間転移ドライブの調子が悪くて、アイサツが遅くなっちゃった♪ 初めましてハルはハルッ! よろしくね!」
「……夢だ」
コレは夢だ。
どうやら頭を打ったらしい。そう決めつけて、芝生にダイブ。
そのまま、グ~スカピ~♪
「こ、こら、ハルの言うことを聞けぇっ!」
「幻覚&幻聴だ。もしくは思い出の領空侵犯、つまりは夢だ。グ~~ッ!」
極力非現実的な物を見ないようにしながら芝生の上でゴロリ……と寝返る。
「ね、寝るなっ! 今、大変な事が起こっているのにっ! お~き~ろ~っ!」
「ウ~ンムニャムニャ……もう食べられないよぉ……」
「ふん、いいもん。じゃあ”もう一方”の方にお願いに行くから、裕樹はそこで ずっと寝てろっ!」
姿形に合わせるように可愛らしい声の気配はどこかに行ってしまった。
|