東京の夜にはふたつの世界がある。
ひとつは、無辜の民が穏やかな日々をむさぼる表の世界。
ひとつは、マフィア、殺人者、違法難民、企業――そして、奇怪な『魔』のモノが跋扈する裏の世界。

古よりふたつの世界に引かれていた境界線――「人魔不干渉」というルールは、すでに形骸化した。
人は欲望のままに闇に堕ち、『魔』は光差す場所に勢力を伸ばす。
世界は混沌に沈み、正道は地に堕ちた。

しかし、それを許さない者もいる。

“対魔忍”――それは、『魔』と対抗できる異形の力を秘め、果てなき戦いを続けてきた“忍のもの”たちの末裔。
今もなお、闇に潜み戦いを続ける無双の戦士たち。
時の政府は彼らを組織化し、『魔』を討つ刃とするのを目論んだ。

そうして招集された忍の中に、ひときわ異彩を放つ者がいた。
ふうま一族を束ねる“八将”の名を持つ、ひとりの女――心願寺紅。
対魔忍にして、その身のうちに『魔』の血を宿す異形の存在。

人でもなく、『魔』でもなく――その矛盾は、紅を周囲から遠ざける。
自身の血に眠る『魔』を憎みながら、政府の犬として孤独な戦いに明け暮れる紅に、ある日、目を付ける者がいた。
男の名は、天堂数馬――地下都市ヨミハラで強大な権勢を持つ残虐非道の闇商人。

紅の中に眠る呪われた宿命を巡り、闇深き東京の夜に新たな陰謀がうごめき始める――娼婦となった美しき対魔忍の前に予想外の運命が!