キーンコーンカーンコーン
授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
雅臣が目指す場所はただ一つ。
学食でも無く購買部でも無いその場所は——屋上だった。
「お待たせーーっ! 愛しの子猫ちゃんたち!」
ドンッと勢い良く屋上に通じる扉を開ける雅臣。
「うぅっ……あんたに、子猫ちゃんとか言われると鳥肌立っちゃうのよ」
「同じく……」
「これはリディアとアルカナへの愛があるから出来る事
なんだって! さぁ! 美尻ちゃん達、今日こそ恥ず
かしがらずに俺の愛を受け止めてもらうよ~♪」
「あんたの愛なんて、今すぐゴミ箱に捨てちゃいたいく
らいだわ」
ツンツンと冷たい言葉で、ハートを切り裂いてくる女
王様然としたスレンダーな美少女の名はリディア。
その気品と高慢さが絶妙にブレンドされた態度の通
り、魔王の一族だった。
褐色肌が大好きな愛好家のバイブル月刊褐色娘monmon
でよくモデルをやっている、成績優秀にして生徒会長の
美少女悪魔。
小ぶりな胸と引き締まった体。そしてみごとなライン
のお尻の持ち主。
勿論、学園のアイドルだ。
そんなリディアに冷たく睨まれながらも、
無意識のうちに口元が緩んでしまう。
「ふふふふふっ」
「また……良からぬ事を企んでいるな……」
リディアの隣で眉をしかめ小さく呟く、グラマラスな女生徒。
彼女の名はアルカナ。死神族の中でも名門の一部族の長だった。
リディアと同じでよく月刊褐色娘monmonで良く取り上
げられている。
成績は優秀でクールな顔立ち。
アルカナに踏まれ責められたいと思っているM男は、
この学園内だけでも数えきれない程いる。
リディアとは正反対の、ボリュームたっぷりの体に、
安産型の大きなお尻。
こちらもリディアと双璧をなす学園のアイドルだ。
クールなアルカナだが、ひとたび怒れば手をつけられ
なくなる。
デスサイズを振りまわす彼女の姿は、まさに死神その
もので、誰もが死の恐怖に怯える事になる。
学園で双璧をなす美少女であり、その魔力も折り紙つ
き。
彼女達に安易に言いよれば、痛い目を見る。
その事を知っている学園の生徒達は、彼女達に迂闊に
近づく事も気軽に声をかける事もしない。
昼休みになれば、この学園のアイドル二人は屋上で昼
食を食べる事になっている。
その美しさと高貴さの為、二人の邪魔をしないように
と、学園の生徒は誰も屋上には近づかなかった。
だが、俺を除いては……
そしていつも通りに嫌がる彼女達のお尻をわしづかみにし
彼女達の抵抗をも無視しお尻の感触を堪能すると、彼女達を怒らせてしまったみたいだった。
彼女達は渾身の魔力を放ったが、俺が持っていたお守りのおかげで防げた。いつもならこれで俺は倒されて保健室送りにされるのだが……
彼女達のいつもの攻撃を防げたことに俺はテンションを上げ
目の前の2人のお尻を更に堪能していると、今度こそ本気で
怒らせてしまったみたいだった。
「魔力が効かないなら……呪い殺してあげるわ。体をゆっくりと腐らせながら殺してあげる。私達を怒らせた事を……腐りながら後悔しなさい」
「呪力……?」
魔族のリディアはそれ程呪力は強くないが、死神族の
アルカナの呪力は、絶大なものがある。
「リディア……ここは私に任せてくれ……呪力ならば、私の方が手慣れている」
「分かった……アルカナに任せる……私は、力をアルカナに力を注ぐだけで良いのね?」
「頼む……」
「ち、ちょっと待った……呪力って……くっ…これ大丈夫か?」
手の中にあるモノをギュッと強く握りしめる。
魔王の娘にして絶大な魔力を誇るリディアの魔法攻撃
に耐えられたのは、今握りしめているお守りのおかげだ
った。だが、魔法攻撃には耐えられたが、果たして呪力に対
しては——
(おいおいおい……生きたまま腐っていくとか勘弁だぞっ!?)
「うっ……わぁっ……!? ち、ちょっとタイムっ! 待った待ったっ!」
詠唱を始めたアルカナに声をかけるが——
「もう無理よ。こうなったら、アルカナ自身にも止められない」
完全に術の中に入り込んでいるのか、アルカナには俺
の声は聞こえていないようだった。
焦る俺を見て、リディアが満足そうに笑う。
「柊……朽ち果てながら、己が欲望を恥じるが良い!」
詠唱を終えたアルカナが、瞳を俺へと向けてくる。
呪力が周囲を満たしているのか、へばりつくような重
苦しい空気が辺りに満ちていく。
「え? あ、アルカナっ……こ、これ……」
「うぅっ!? 何だこれはっ……」
違和感を先に覚えたのは、リディアとアルカナの二人。自分達の予期しなかった状態に、鋭敏な二人は気付いている。
遅れて、俺の方もただならぬ空気を、本能で感じ取っていた。
「え? え!? 何だかヤバそうな感じっ……うわぁああああああっ!」
気付いた時には、まばゆいばかりの光が俺たちを包み
込んでいく。
その光の中に溶け込んでいくと、やがて意識はスーッ
と深い闇の中へと落ちていった。
目を覚ましたとき、リディアとアルカナの身に
何かが起こっていた……
その事により、俺——柊雅臣にとって
バラ色の青春学園生活が待っていたのだ♪ |