主人公・橘真一は北野聖風学園に通う学生。
人も羨む端整な顔立ちの美少年だが、言い寄ってくる女生徒にはまったく興味がなかった。と言って男色の悪魔というわけでもない。
「えっと、二時間目は国語……担任の山田の授業かぁ」
「真一楽しみだよなあ♪」
主人公に同じクラスで親友の南岡鉄二が話し掛ける。
「え? 何が??」「はあ!? 真一聞いてなかったのかよ!」
「え!?」「だからー、山田が事故ったから二週間だけ臨時の先生が来るって」
「あ、そんな事言ってたような……」
「それでさ、若い女の先生らしいぜ!」「そうなんだ」
「そうなんだって。ちぇ、相変わらず女の興味なしか。
真一は羨ましい顔してるのにもったいないない! この男色の悪魔め!!」
「ちっ、違うよ! 僕には………!」
「へいへい、大好きな隣の姉ちゃんがいたんだろ」
「あ、うん……」
「でも結婚してどっかへ行っちまった」
「そ、それは………!?」
「おっ 来た来た!!」
騒がしかった教室が一瞬で静かになる。クラス全員が担任の山田の変わりに来るという”若い女教師”がどんな人物なのか期待していた。
(僕には……どうでもいいや…………!!!!)
教室に入ってくる”若い女教師”。優しそうな大人の女性という感じ、それもかなりの美人先生に教室がざわつく。そして主人公の心の中も。
忘れたことのないその容姿。何年かぶりの再会でも色あせない。
(け、圭子……さん………!!?)
※
主人公は授業の後、圭子を呼び止める。
「圭子さんっ!」
「久しぶりね、真一君。すっかりカッコ良くなって。見違えたわ!」
思い出と変わらない圭子の笑顔。圭子はそっと主人公の耳に小声で
「学校では圭子先生って呼んでね。一応少しの間、真一君の担任なんだから!」
「あ……うん………圭子……先生」
「ごめんね。本当は先に真一君に知らせようと思ったんだけど、
急に決まっちゃって。驚いた?」
「うん………」
「実はね、先生辞めるところだったんだけど、どうしてもって頼まれちゃって。
本当に急遽って感じで。そしたら真一君が通ってる学校で真一君のクラスで。
凄い偶然で私もびっくりしちゃった」
「えっ……? 先生辞めるの!?」
「あっ……うん。えと………夫の都合でニューヨークに行く事になったの」
その言葉に主人公は一気にどん底に落とされる。
つまり担任の山田が入院から戻ってきたら圭子は遠くへ行ってしまうというのだ。
「真一君? 真一君どうかした??」
「あ………ぃえ。ちょっと……ごめんなさい」
「夫は先にあっちへ行っていて、今私は実家へ戻ってるの。
だから今晩遊びに行くね。おばさんにも挨拶してないし。
あっ、そろそろ行かなくちゃ。またね、真一君」「あ……うん。また……」
主人公はしばらくその場に立ち尽くす。
その夜――――
約束どおり圭子は主人公の家に遊びに来ていた。主人公の家族と久しぶりの再会を祝すと、圭子は昔と変わらない風に主人公の部屋へと遊びに来た。
主人公はそっと圭子にお茶を出す。
「あ、ありがとう♪ はじめてお茶入れてもらったね」
「そ、そうだったかな?」「うん……はじめてだよ」
主人公はお茶を飲む圭子をじっと見詰める。
「ん? 何?」「いや……何でも……」
「本当はね、真一君がね………口聞いてくれないかもって思ってた」「え……!?」
「その………私、結婚して急に出て行ったでしょう?
真一君に何も言わずに出ていったから、怒ってるかなって……」
「あ、うん………さ、最初は怒ったよ………」
「やっぱり………ごめんね。でも学校で真一君から声掛けてくれて嬉しかったよ」
「………千葉の家にはもう帰らないの?」
「千葉の家は引き払ったの。だからニューヨークに行くまでは実家に。
あっ、真一君、私の家知ってたんだ??」
「うん。おばさんに聞いた。会いに行こうと思ってた……」
「そうなんだ……そっか。会いたいって思ってくれてたんだ」
「うん。ずっと思ってたよ」「真一君………」
「でも、どうして何も言わずにどっか行ったの? 結婚なんて全然聞いてなかったし」
「それは………それ……は………」
圭子が何かに吸い込まれる様に眠りにおちると、主人公は圭子が完全に寝入ったかを確認する。そして主人公は慌てた様にケータイで電話する。
『もしもし、橘です』
『ミ、ミキオ兄ちゃん!! 言われた通りに眠らせたよ!!』
主人公は従兄弟で兄と慕う橘ミキオに電話をしていた。
『おっ、真一か! あの睡眠薬よく効くだろ?? フフフ』
『ぼ、僕、これからどどどどうすれば!?』
『アハハ! 慌てるな弟よ。この前渡した「女の堕とし方、秘儀伝授」全12巻の
通りにすれば大丈夫だよ』
『あ、うん……そうだったね。確か次は縄で縛って……』
『これから大事なんだ弟。女は子宮を支配した男のモノになるんだ』
『うん!! 子宮を堕とすんだね!! 僕頑張るよ!!!』
電話をきると主人公は決意も新たにクローゼットや引き出し、タンスの裏などからこの日のために従兄弟のミキオから譲り受けたり、買い揃えた道具を取り出す。
「ニューヨークなんかに行かせない!」
眠れる圭子にそう宣言して主人公は荒縄を持ち、
「け、圭子さんを調教<せっとく>して、子宮を堕とす<僕のものにする>ね!!」
こうして主人公と圭子さんとその他一部の波乱の学園生活が幕開けする。
|