バシィィィィィィィィィンっ!!!!!!
俺は衝撃とともにその場に崩れ落ちる。
周囲から笑い声。
「キャー! 直撃よ!」
「橘、また妄想してただろ!」
俺は橘壱郎。
東坂北野学園の二年生。中肉中背、特技は………妄想。
今、俺がいるのは学園のグランド。
HRの時間を利用してクラス全員でドッジボールをしているのだが、俺は得意の妄想でウツツをぬかしている所、こうして顔面にボールを直撃されたというわけだ。
「フフフ。ぼーとしてるからよ壱郎くん」
俺にボールを当てた張本人、
クラスの担任・森乃由子先生が倒れた俺を覗き込む。
「大丈夫のようね?」
由子先生はこうしてHRに何か企画しては、学生に混じり本人も楽しんでいる。
今もドッジに参加するため女子に借りたブルマ姿でいる。
ブルマ姿で……下からのブルマ姿で……。
また妄想が膨らみそうになる。
ボール直撃の原因ももちろん、由子先生のブルマで妄想していたためだ。
それなのに、当の由子先生が俺にボールをぶつけるなんて酷い!
だって俺は悪くない。
大人のフェロモン漂う由子先生が、むっちりながらもシマル所シマッタエロ巨乳ボディにブルマ姿だなんて、妄想を膨らまさない方が異常なんだ!
ふぎょっ!
その時、何か大切なものを踏みにじられる感覚に妄想を中断する俺。
「先生! こんな奴無視してイイですからドッジ続けましょう」
現実に目をやると倒れているイタイケナ俺の頬を土足で踏みにじる女子一人。
何かと俺に冷たく当たってくる、転校生にしてクラス委員の座まで上り詰めた帰国子女、双葉・リリー・ラムセスだ。
祖母がエジプト人で何でもクォーターらしいが、どれが名前でどれが苗字がさっぱりわからない女だ……なおかつ俺を土足で踏みつけるなど言語道断!
「あの……痛いんですけど」
「あら生きてたの? じゃあ、さっさと立ちなさいよ平民!」
「立とうにも踏みつけられてたら立てないんですけど……」
「あら、ごめんなさい」
ようやく足がどけられる。
リリー(確かこれが名前)はエジプトの高貴な氏族の家系らしく、人を公然と平民扱いして来る。
いや、平民なんだけど、どうも悔しい感じだ。
外人の血のためか、端正な顔立ちにモデルのようなスタイル、黙っていれば売れ筋のフィギュアのような美少女なのだが、ともかく性格が気に食わない!
これまで何度妄想で復讐してきた事か!
覚えていろよ! この美少女フィギュアめ!
俺はそう内心で呟きながら立ち上がろうとすると。
ツー……
「お! 橘、鼻血だ!」「本当だ!」
「ちょっとあんた! 私、鼻は踏んでないわよ!」
「俺達見てたけど全然踏んでない踏んでない!」
「うんうん。リリーちゃんは悪くないよ」
どうやら鼻血が出てきたようだ。
そう言えば何故か身体がダルい。いや、熱っぽいかも。
「……あれ?」
そこで俺の意識は暗転した。
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