——ゴルドアナ大陸。

様々な種類や形体をもつ生物が己たちだけの掟のみで生き続ける進化の実験場のような巨大大陸。
彼等の中で、唯一にして絶対なる、共通の掟。
“弱肉強食”。

ゴルドアナ大陸の中で下位の存在であり、他の生物が持たぬ“知恵”と“道具”を使う事で、どうにか絶滅を免れている“人間種”。
彼等は数十〜数百人規模の“村”と呼ばれるコミュニティを作り、ひっそりと寄り添って生きている。
しかし、彼等もまた、絶対的なゴルドアナのルールの中でもがく生物の一つに過ぎなかった。
 
 
——とある集落付近の街道。

「さて、ではボルカ村に戻る訳だが……。この辺は安全地帯とは言え、戻るまでは気を抜くなよ?」
「ああ、分かっている」
「じゃあ、出発しんこーっ!」

三人の外獣狩りである、ゼノ、エルマ、アルクは依頼をこなし、いつものように村へと帰る帰路であった。

「あっ、見て見て! あそこにリルスがいるよ! カワイイなぁ!」
「アルク、上ばっかり見てたら危ないぞ。ほらっ、そこに石が……」
「分かってるって……わぁああ!?」
「やっぱり躓いた。だから言ったのに……」
「い、今のは油断しただけだよぉ! その証拠に転ばなかったし!」
「はいはい、ちゃんと前を見て歩けよ」

——などと、和やかに会話をしながらボルカ村へ続く街道を歩く三人。
あと数百メートルで村へ着くというところまで到達したその時だった。
草むらをかき分け、何者かがこちらへ向かってくる音が聞こえた。
 
 
「な……何?」
「まさか……外獣?」

身構え、息を潜めて各々の武器に手を伸ばす。
ごくり、と唾を飲み込み身構える三人。
そこへ飛び出してきたのは——

「……ガズル!?」

飛び出して来たのは、ガズルと数人の外獣狩りだった。

「……が、が、外獣に襲われた……。お、お、お前達も早く逃げろ! こ、こここ、殺されるぞ!」
「外獣? この辺りには、そう危険な外獣は生息していない筈……」
「い、いいからとっとと逃げろ! すぐにヤツはこっちに来る——うわぁあああッ!!」

唸るような地響きを上げ、何者かがこちらへ近づいてくる。
その正体を見た途端——
一同の顔は凍り付いた。
 
 
『ギャォオオオオ——ッ!』

「何だ……これ……。こんな化け物、見た事ない……」

目の前に現れたのは、巨大な翼の生えた生き物だった。

「くっ……。こうなったら応戦するしかないな。ガズル、貴様も協力しろ!」
「こんなヤツ相手にしたら、死んじまうって!」
「逃げたところで結果は同じだ。戦えば殺す事は出来なくても、傷を追わせて逃げる隙を作ることは可能かもしれない」
「………くそっ!」

巨大な外獣はぎょろり、と太い首を動かし、外獣が一同を見回す。

「ひっ……あぁあっ……」

アルクがガタガタ震えているのを見て、怯えているのを察知したのだろう。

「ギャォオオオ——ッ!!」

外獣が雄叫びをあげ、アルクに向かって襲いかかってきた。

「きゃぁあああああッ!」
「アルクッ!!」

アルクを庇うようにゼノが外獣の前に立ちはだかり、剣で腹に切りつける。
外獣が負ったのはほんのかすり傷だったが、己の身体を傷つけられた事で、怒りを買ってしまったようだ。

「ギャォオオオオオオオオオオオオオオッ!」

外獣は火炎を吐き、今度はゼノに襲いかかってきた。

「ぐっ……あぁああああ——ッ!」

まるで虫けらでも追い払うかのように、外獣になぎ払われる。
ゼノの身体は宙を舞い、ぐしゃりと地面に叩きつけられた。
外獣はけたたましい咆哮をあげてそのままゼノを踏みつぶそうとする。

「チッ……しょうがねえ!」

ガズルがベルトにつけた小物入れから煙幕筒を取り出し、外獣に向かって投げつけた。
煙幕筒は外獣の眼前で爆発し、白い煙が周囲を白く染める。
ガズルがはった煙幕が目眩ましになったのか、
外獣はキョロキョロと首を左右に振って獲物であるゼノ達の行方を捜している。

「よし、この隙に逃げるぞ!」

駆け出したガズルの後に続き、エルマとアルクが負傷したゼノを両脇から支え、外獣の前から逃げ出した。
 
 
「先生! ゼノは……ゼノは助かるんですか!?」

村に戻り、今だ意識の戻らないゼノを医師の元へ連れていく。

「一命は取り留めたが……。手持ちの薬では、応急処置しか出来ない。このまま放っておけば、確実に命が危ない」
「そんな……! なんとかならないの!?」

二人の問いかけに、医師は力なく首を横に振った。

「この村にある薬ではどうにも出来ない。材料さえ調達出来れば、きちんとした手術や投薬を行えるが……」
「その材料は、どうすれば手に入るの!?」
「ボルカ村の周囲に生息する外獣には、薬の材料の素になる成分を持っている者も多く存在する」
「……外獣を狩れば、ゼノが助かる……」

エルマは胸の前で両手を合わせ、ギュッと強く握りしめた。
それをアルクは何かを決心するように見つめていた——