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物語のはじまり
人と魔が境界を保ちつつも最も混交した近未来・日本。

人界と魔界の境には人と魔界の住人が住まう闇の畔と呼ばれるスラムが生まれ、やがて人魔が混交する廃棄都市が出現する。
廃棄都市は、魔界の住人を中心に犯罪者や殺し屋、無政府主義者や反政府組織の構成員から武装難民といった無法者の巣窟であり、しかし一方でアウトローたちの無言の秩序構造によって支配された闇の自由都市でもあった。

今、日本最大の廃棄都市アミダハラに南聖風学園二年、橘陸郎が立つ。

「おい! 何突っ立ってやがる。歩け!」
「は、はい!」

正確には歩かされている。
武装したチョビ髭のオヤジは錆びたカラシニコフを陸郎に付きつける。
チョビ髭オヤジは奴隷商人であり、陸郎の他、幾人かの奴隷を連れて幾人かの部下に警備させながらキャラバンの様にして薄汚れたビルの谷間の道を南へ南へ、廃棄都市アミダハラの中心地シンサイという町を目指している。

「この辺りはトサボリ、別名追剥ストリートって言ってな、
 悪徳商人から日銭を巻き上げようっていう悪辣なる武装難民が出没するんで有名な場所だ。
 だから急いで歩け。
 奴らは悪徳商人の持つ金にしか興味がねえ。襲われれば皆殺しにされる」

チョビ髭オヤジはそう悪態をついて先に見える川にかかった橋を見やる。

「誰が悪徳商人だ、コノヤロー!」
「わっ!? お、俺言ってないッスよ!?」

陸郎は「武装難民でも奴隷商人でも何でもきやがれだ」と内心呟きながら、
こうなった経緯を思い出す。
何故、奴隷商人に連れられているかを。

*            *

「せっかく京都に来たんだ! アミダハラに行ってみようぜ」

冒険は友人の興味本位な提案から始まった。
アミダハラ、日本最大の廃棄都市を見学しようというのだ。
修学旅行の思い出と土産話のために。
廃棄都市アミダハラはかつて日本第三の都市として栄えていたが、米連と中華連合の代理戦争となった半島紛争のとばっちりを受けた性質の悪い弾頭のミサイル攻撃で都市は廃墟となった。
その後、魔界に通じる境界を中心に魔界の住人たちが住まい始めると無法者たちが集まり始め、10年余りで日本最大の廃棄都市に成長した。
この場合、成長と言えるかどうかは別にして、ともかくも大きな町となった。
町が大きくなると、無法と法治の境目に巨大な歓楽街が形勢され、”無法ならではのサービス”を求める客が全国から殺到し廃棄都市の収入源となって、また廃棄都市を成長させてゆく。
そんな廃棄都市アミダハラに学生が興味を抱くことは必然の流れであったが、好奇心のあまりアミダハラは日本で最も危険な町であるという認識を忘れさせてしまった。
陸郎も町の奥地に迷い込んで奴隷商人に浚われるまでは完全に失念していたのである。

*            *

大正時代に架設されたという橋を渡り始める。

「こんな事なら小遣い惜しまず皆と娼館入っておけば良かったな……」
「はぁ……皆、心配してるだろうな……」
「だいたい童貞のまま、俺、死ぬのかな……」
「おい! ブツブツ言ってねえで早く歩け!」

奴隷商人の部下がカラシニコフの銃口で陸郎をつつく。

「わ、わかったよ!」

陸郎は運命を呪いつつ、奴隷仲間の隊列に早歩きで追い付こうとする。

パァンッ!!!!

銃声が響く。
同時に陸郎を怒鳴り飛ばした奴隷商人の部下が陸郎に覆いかぶさる様に倒れる。
頭に風穴をあけて。

「ひぃいいい!!!」

さらに数発の銃声。
奴隷たちの悲鳴。

「なんだよ! いったいなんだよっ!!!!」

陸郎は必死に死体となった男をどけて周囲を確認する。
橋の両側から銃を持った男たちが発砲している。
奴隷商人が言っていた追剥稼業の武装難民だろうか。

「これって完全に待ち伏せじゃないか!!?」

パニックになった奴隷の一人が立ち上がって逃げ出そうとして蜂の巣にされ倒れる。
それを見た奴隷はまたパニくって立ち上がり射殺される。

「あははは……人が次々死んでいくよぉ………あははは……」

修羅場となった橋上で陸郎の意識が現実逃避を始める。
このまま帰れれば最高の土産話となるが現在の状況では冥土の土産コースが濃厚だ。

「神さま! 助けてくれたら俺、何でもします!」

今は自らの運命を嘆いて神に祈る事しか出来なかった。
教会に行った事も神社に参った事もないのだが。
陸郎は頭を抱え地を這う。
橋の上なので逃げ場がない。

ヒュンヒュン!!!!

耳のすぐそばを銃弾が通過する。
陸郎は地に張り付きながら目をつぶり震えるしかできない。

「か、神様っっ!!!」
「神に祈るなら死んでからにしなさい」
「えっ?」

陸郎はおそるおそる見上げると銃弾飛び交う中、トランクを持った長身の美女が立っている。

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■魔女
人間界、魔界にも存在した魔法(魔術)の類いを操り、悪魔と契約して異形の力を行使する女性魔術師の総称。
魔女というものは、
・魔女に弟子入りして魔女になります。
・弾丸を防ぐのは魔女だから当たり前。魔女本人は気合いという談。
・魔女は悪魔と契約して力を得ているものらしい。ただし代償を支払っている。
・相性の良い人間の魂を奪って不死者とし、こき使う。
・相性が良いとはどういう事か尋ねると、なんとなく雰囲気という談。
■廃棄都市アミダハラ
日本最大の廃棄都市。
廃棄都市アミダハラはかつて日本第三の都市として栄えていたが、米連と中華連合の代理戦争となった半島紛争のとばっちりを受けた性質の悪い弾頭のミサイル攻撃で都市は廃墟となった。
その後、魔界に通じる境界を中心に魔界の住人たちが住まい始めると無法者たちが集まり始め、10年余りで日本最大の廃棄都市に成長した。
この場合、成長と言えるかどうかは別にして、ともかくも大きな町となった。
町が大きくなると、無法と法治の境目に巨大な歓楽街が形勢され、”無法ならではのサービス”を求める客が全国から殺到し廃棄都市の収入源となって、また廃棄都市を成長させてゆく。
アミダハラ内は廃墟地区と普通の街並みとさほど変わらない町地区があり、有名な町地区にはキタやシンサイ、キョウバシなどが知られている。外部の人間がシンサイなどにも訪れるが、そのためには武装難民などが盗賊行為を行っている大変危険な廃墟地区を通らなければならず、護衛なしでの廃墟地区の移動は自殺行為に等しい。
■シンサイ
廃棄都市アミダハラの中心地。
巨大な歓楽街でホテルなどレジャー施設も充実している。
アミダハラ最大の組織が支配している。
組織は調停者の役割を担っており、町で問題が発生すると各組織の頭目が集まり会議が開かれる事もある。
そこへ、今までどこに隠れていたか奴隷商人がほふく前進で転がり込んでくると、

「おお! アンネローゼ良いとこに来たぜ!!! 頼む! 助けてくれ!!!」
「……私は通りかかっただけで、そんな義理はないわね」

奴隷商人がこの肝の座った美女アンネローゼに助太刀を頼む間にも、彼の部下が次々と武装難民の銃弾に倒れてゆく。圧倒的に地の利がないのだ。

(それなのに、どうしてこの人には弾が当たらないんだ!?)

その時、陸郎は気付く。
彼女の周辺の地面に弾丸が多数転がっている事に。
そして彼女の心臓付近で速度を緩めた弾丸がやがて完全に空中で静止してポトリと落ちる様を目撃する。

「た、弾が!? ど、どうして!!!!?」
「魔女だから当たり前だろ!? 小僧そんな事も知らんでアミダハラに来たのか!? だから悪徳商人に浚われちまうんだ!」
「魔女!?」「誰が悪徳商人だコラっ!!」「ええええ!?」
「じゃあ、行くわね。せいぜい頑張りなさい」

アンネローゼが奴隷商人を無視して去ろうとすると、

「わかった! 払う! いくらだ!! 言え!!」

するとアンネローゼは歩みを止める。

「見るところ生き残りの奴隷はそこの少年だけのようね」
「何っ!? それはないだろ!? せめてコイツを高く売らない事には……!?
 現金はどうだ!? そんなに持ち合わせはないが十万程度なら……」
「いくわ」
「わかった! 払うよ! 魔法の実験でも何でも好きに使ってくれ!」
「そう。ちょうど奴隷が欲しかったから助かったわ」

アンネローゼはニヤリと笑みを浮かべると、

「聞いての通りよ武装難民ども!! 私は奴隷商人の味方をする!
 それでも奴隷商人から日銭を奪いたいなら私が相手になるわ!」

アンネローゼの声に呼応して銃弾が止む。
武装難民たちも魔女に弾が効かないという事はわかっているのだろうか。

「でも、何で魔女には弾が効かないんだ!?」
「気合いよ、少年」「ええええ!?」

アンネローゼは持っていたトランクをズシンと地面に置く。
するとトランクの表面からぐにゅぐにゅと肉腫を浮かびあがったかと思うと、それは腕となり手となり、トランク肉腕は自らを開けると、開いたトランクの口から黒い太刀が浮き上がる様にして出現する。

「おお! 魔刀・金剛夜叉か! 久しぶりに見るな!」

アンネローゼの異形のトランクから出現した、到底トランクには入らぬであろう大きさの太刀を見てそう感心する奴隷商人。
アンネローゼがその太刀を掴むと鍔からがまるで生き物の様な黒い帯が無数に出現して彼女に腕に巻きついてゆく。

「先生!」

武装難民のリーダーと思しき男がそう叫ぶと、
彼らの列を割って太刀を持った着流しの大男が姿を現す。
あちこちに見られる刀傷の跡と赤ん坊一ダース殺しても表情を変えなさそうな凶悪な面構えに陸郎は思わずぶるっと震えてしまう。

「ひぇ、ありゃ最近、魔界から流れてきたって噂の阿傍(ヨミ:アボウ)っていう剣客だぜ。
 あいつら、とんでもねぇ助っ人隠してやがったな。
 おいアンネローゼ! 相手の助っ人が強力だからって報酬はまんまだぜ!」
「わかってるわよ。包茎オヤジ」

アンネローゼはそう言うと太刀を上段に構える。
片手で。
半身となって。

「舐めているのか?」

大男はそう言って、ゆっくりとアンネローゼとの間合いを詰めると太刀を抜き上段に構える。
頭の脇で構える武者上段の構えだ。

「片手で俺の肉を抜けると思っているのか?
 伝説の金剛夜叉をふるう剣客がいると聞いて出てくれば女でしかも剣の素人とは」
「能書きは私に勝ってからほざきなさい。本気を出さないと殺すわよ」
「メスが! 魔女の風情が持って良い太刀ではない……!」

大男の筋肉がドクンと盛り上がったかと思うと、大男の額から野太い角が生え、人面が割れるように隆起してついには頭全体が牛の頭部に変化する。
つまり牛頭人身の魔人。

「相手が愚かな素人剣士とて手は抜かぬ。我が一の太刀で葬るのみ」
「”二の太刀要らず”ね。その筋肉から打ちおろされる剛剣を想像すると感じてくるわ」

アンネローゼは妖艶な笑みを浮かべ舌でペロリと豊かな唇を舐める。

「少しは知っているようだな女……だがっ………!!!!!!」

大男が先に動く。
剛剣が猛烈なる真空の刃を生み出しながら一気に振り下ろされる。
同時に右足の踏み込みによって一瞬でアンネローゼとの間合いをつめて。

ズウウウウンッ!!!!

大男の太刀がアスファルトを半ば両断する。
それはアンネローゼの半身の構えのすぐ横の。
アンネローゼが動いたわけではない。
大男の幾本かの指から血が滴る。
アンネローゼのカウンターの刃が大男の指を切り落とし剣筋をそらせたのだ。

「ぐぅううううううっ!!!? 最初から小手が狙いかっ!!!!」
「あら、そうかしら?」
「グフっ! 少しはやるようだが同じ技は二度とはくらわぬぞっ!!!!」

大男は再び太刀を上段に構えなおす。

「早さは認めるが所詮、その程度の剣力では俺に致命傷を与える事はできん!!!!」
「わからない? 今、”刀が遊んだ”だけよ。お前の悪に反応してね。本番はこれからよ」
「戯言を!! 死ねェエエエエエエエ!!!」

大男は再び剛剣を振りおろす。
アンネローゼは動かない。
彼女が両断されるかに見えた刹那。
金剛夜叉の鍔からまた無数の黒い帯が飛び出すと一瞬で彼女を覆ってしまう。
それはくろがねの甲冑のような形状となって。

ガギィイイイイイッンン!!!!

大男の剛剣が跳ね返される。

「何ぃいいいいいい!!!!?」

そしてアンネローゼを覆った黒い帯の甲冑が一瞬で解かれると甲冑を構成した黒い帯は、今度は刀身への集まってゆく。

「はああああああああああっ!!!!!!」

アンネローゼの気合いとともに金剛夜叉と呼ばれる魔刀が巨大な太刀へと変化し、

「あなたの悪を喰らってあげる♪」

巨大な魔刀が一閃、大男の腹が横一文字に切り裂かれる。

「グガァアアアアアアアアッッ!!!!」
「はあああああっ!!!!!!」

さらに舞い踊る様な剣戟が大男の肉の鎧を切り刻み、鎧の隙に執拗な突きが何度も打ちこまれる。
その間、僅か数秒。
大男は大動脈より猛烈なる血を発しながらトドメの後ろ回し蹴りを頭部に撃ち込まれる。
首の骨を粉砕され血の塊となった大男はもんどりうって蹴り倒される。
勝負あった。
武装難民たちは一目散に逃げてゆく。

「い、いったい……」

恐ろしい光景に腰をぬかす陸郎。

「いったい何なんだ……!!?」

奴隷商人が、

「小僧、覚えておくこった。
 アンネローゼが持つ太刀、金剛夜叉は悪を喰らい尽くっていう性質の悪い魔神が化身したっていう魔刀だ。
 あの女は悪魔と契約したわけさ。何を代償にしたのかは知らないがね」
「悪魔と契約……!?」
「何だ!? 魔女ってのは悪魔と契約するもんだろ小僧、本当に何も知らねえ野郎だな」

そこへ姿が通常に戻った魔刀を持ったままのアンネローゼが、

「オヤジ、約束通り、少年はもらうわ」
「けっ! 好きにしやがれ」
「ええ、好きにするわ。相性が抜群なようだから。これには才能がある」
「おいおい! やっぱり気付いてたのか!? しかしお前、ってことはよ……」

アンネローゼと奴隷商人の会話から、どうやら自分はアンネローゼに助太刀の代償として譲られるらしいと思う陸郎。
陸郎はとにもかくにも、武装難民から救われた件のお礼を言おうと彼女に近づくと、

「あ、あの……」
「では少年、今日からお前は私のモノ」

スパン。

突然、陸郎は宙に飛ぶ感覚。
そして、

「痛っ」

地面に激突する感覚。
視界には”自分”の身体。
首のない。

「………え?」
「あーあ、やっぱりヤっちまった!」

奴隷商人はそう言って肩をすくめる。

「…………ぇ?」

意識が遠のいてゆく陸郎。
抱え上げられる感覚。
陸郎の首を切り落としたアンネローゼが陸郎の首を拾い上げて、

「お前は私のモノだ♪」

と妖艶な笑みを浮かべて。
陸郎の意識が闇に飲まれる瞬間、陸郎はキスをされたような気がした。
舌を入れられるような濃厚なキスを。