かつて日ノ本国は『帝』という君主を頂点に抱き、貴族が支配をする絶対帝政の国であった。
長きにわたる絶対帝政はやがて特権階級の堕落を招き、帝と縁をなす門閥貴族たちが民の疲弊も考えず国を私物化し考えうる暴挙の限りを尽くしていた。
その日ノ本である時、革命が起こる。
以降、革命の炎は瞬く間に日ノ本国を燃やしつくす勢いで覆いつくしていった。
国のいたるところで憂国の学生が蜂起し国軍と衝突、無辜の民衆をまき込みながら『帝』派と革命派で戦いが繰り広げられていった。
元々、貴族達の為だけに行われていた政治は、この革命を機に民衆の中で溜まりに溜まっていた不満を爆発させる事となった。
既得権益を守りたいという貴族をはじめとする守旧派は大衆の支持を得られず、戦況は日々刻々と守旧派不利になっていく。
そして、戦況を覆す事が出来ないと分かるや、貴族達の中には私財を持って、隣国ロースシルトへと亡命する者達が出始める。
その流れは堰を切った奔流のように貴族達の結束を崩し、日を追うごとに亡命者は増え、貴族達の戦況は益々不利なものへとなっていった。
そして革命が起こってから三年目の夏。『帝』をはじめとする貴族達の多くは、日ノ本国を追放され、日ノ本国は共和制の国となったのだった。
日ノ本国が共和制となり十年以上の時が流れ、今、『菊ノ葉学園』で二人の女剣士が剣を交えていた。
一人は日ノ本国を統治していた『帝』に連なるもので、菊ノ葉学園生徒会長の許嫁でもある、龍田宮アリア。
もう一人は、アリアの存在の前に永遠の二番手と呼ばれている生徒会憲兵部の山野乃恵美だった。
生徒から圧倒的な人気を受けるアリアと、冷酷で高慢な性格の為に全く人気のない乃恵美。
この両者共に、日ノ本国を想う気持ちは強いものがある。
だが、共和制の強硬派で民族主義者でもある乃恵美にとって、アリアは認められない存在。
それはアリアの母が、隣国ロースシルトの皇帝の一族の為だった。
アリアの存在はいつかは、日ノ本国の共和制を危うくする。
そう信じ込んでいる乃恵美が、アリアとロースシルト国の間諜が深夜に対峙しているのを見た時から――
この物語が動き出す。
アリアの一途な正義と乃恵美の歪んだ正義。
その二つの正義が絡み合いながら、日ノ本国を震撼させる冤罪事件が展開していくのだった。 |