「本当はとても不安なの。先生方にまで期待されちゃっているけど、
右も左もわからない新米なんだから。でも……」
全会一致で新生徒会長に選ばれた美少女・古川天音は、この重い責任を果たすべく努力する、と清楚な顔に決意を浮かべ、少し後を歩く主人公・岡崎諒に声をかける。
「はは。結構正義感強いんだね、古川さん。でも心配いらないよ」
「天音でお願い、岡崎くん。……心配いらないって、どうして?」
「なら、僕のことも諒で……だって他ならぬ君の掲げる目的だ、
この学園の生徒全員が協力してくれるよ、天音……
いや、聖女ルシリス様」
天音は容姿端麗、成績は体育まで含めてトップクラス、性格は穏やかで面倒見が良く、何より学園を運営する教会からも信頼を置かれるほどの篤い信仰を持っている。
将来は教会の修道女になることを目指している天音の事を、学園の生徒たちは磔刑十字教の教典に登場する偉人になぞらえて『聖女ルシリス』と呼んでいた。
だが天音本人は、いささか過大な崇拝からつけられた「ルシリス」のあだ名に端正な眉をひそめる。
「不遜だもの。わたしなんてただの一生徒、みんなと同じ、普通の女の子なのよ?」
「あくまで愛称、ニックネームだよ。それにちょうどいいじゃないか。
相手は『魔王』なんて呼ばれてる奴なんだろう……?」
最近、学園に隠れて校則で厳しく禁じられている不純異性交遊……それどころか犯罪に近い行為が、不良生徒を中心に、職員たちにまで蔓延しているという噂が囁かれていた。そして不良たちを束ねる正体不明の生徒は、『聖女ルシリス』にちなんで教典に登場する最悪の背教者『魔王ハルファス』などと呼ばれている。
「まったく。噂が本当ならどうかしているよ。売春までしてるって…」
「やめて、お願いよ」
「……ごめん」
生徒会室についた天音と主人公を生徒会役員が迎える。
「会長!」
「古川生徒会長!」
良家の子女ばかりの生徒たちの中でも選りすぐりである役員は皆、天音をまるで女神を崇める騎士のように崇拝し、忠誠を誓っている。
中でも風紀委員長の主人公は、天音を支える誠実で優秀な参謀として天音の信頼を勝ち得ていた。
「みんな、わたしに力を貸して欲しいの」
天音は役員たちの前で、聖女と魔王との戦いなどと囁かれる一連の騒動に真っ向から立ち向かうと宣言する。
「もし『彼』が本当にいるのなら、
そんな馬鹿げた行いはやめさせなくちゃいけない。
いいえ、きっと神がお許しにならない」
天音の宣言に大きく頷き、沸き立つ役員たち。
「ああ、そうだね。神様がきっと……」
正義感と信仰の熱気が充満する中、静かにつぶやく主人公。
生徒会をそっと抜け出した主人公は校舎のめったに人が立ち入らない区画までやってくると、使われていない教室に入る。
闇が支配するそこは、たった一人の主の命令を実行するために、大勢の生徒達が待ち受けている、『魔王ハルファス』の牙城だった。
「……急な用件とは何だ?」
主人公は善良な風気委員長の仮面を脱ぎ捨て、尊大な態度で男たちに問いかける。
「その……今度の生徒会長は中々の切れ者でして」
「俺達の『事業』が、かなりやりにくく……」
「フッ。たった今もその聖女様の顔を拝んできたところだ。
心配するな。これ以上、あの女に好きなようにはさせない。
俺達の楽園に、あの女も引きずりこんでやろうじゃないか?」
主人公はすり寄る美女達の相手をしながら声のトーンを落とすと、自分達の『事業』を邪魔する障害を取り除くための姦計の一部を手下たちに披露する。厳格な名門学園に黒い欲望を垂れ流す男たちの眼がギラギラと輝き、彼らは自分たちの首領であり、この学園の絶対の権力者である主人公を称える。
「さすがは『魔王ハルファス』様っ!」
「『聖女ルシリス』との対決だ!」
「天音ちゃんを俺達の奴隷娼婦にしちゃおうぜ!」
「あの女ならたっぷり稼げるぞ!」
<洗脳調教>と<受胎調教>にまみれた学園淫辱伝奇が始まろうとしていた……!! |